久々に書評を上げる。


日本をダメにした10の裁判 (日経プレミアシリーズ 4) (日経プレミアシリーズ 4)


著者のチームJとは、1990年と1991年に東大法学部を卒業した4人の仲間たちだ。

<感想>

代理母問題と痴漢冤罪が印象に残った。
全体を通して見ると、現在の裁判官にそこまで求めるのは酷という気もしてくる。

「公務員バリア」とは初めて聞いた。
公務員は業務上で犯罪を犯しても、「国」などの責任と言い逃れができる、乱暴に言えばそんな話だ。

法曹界に、このようなまっとうな正義感を持つ人が居ることは、とても心強い。

新書で、読みやすい分量なので、広くお勧めしたい。

<目次>

第1章 正社員を守って増える非正社員の皮肉−東洋酸素事件
 個々には正しくても全体で正しいとは限らない
 整理解雇を制限する4要件
 なぜ正社員として働ける会社が少なくなったか
 正社員と非正社員との格差拡大を容認
 パラサイトシングルの皮肉

第2章 単身赴任者の哀歌−東亜ペイント事件
 単身赴任の悲劇
 転勤の犠牲になる家族生活
 就職の際の認識が重視される
 入社時の事情は歳月とともに変わる
 深みの感じられない最高裁判断
 意思に反した単身赴任が横行する
 変わるものと変わっていないもの

第3章 向井亜紀さん親子は救えるか?−代理母事件
 生まれたこの母親は誰
 代理母出産とは何か
 最高裁の論理
 父親と母親でなぜ扱いが違うのか
 権利の救済という本来の責務を放棄
 最高裁の越権行為
 その判断結果は誰も喜ばない

第4章 あなたが痴漢で罰せられる日−痴漢冤罪と刑事裁判
 他人事ではないかもしれない恐怖
 痴漢犯罪−迷惑防止条例違反あるいは強制わいせつ剤
 「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」
 裁判で証明される事実は必ずしも真実ではない
 痴漢事件の特殊性
 冤罪事件に向かう悪循環
 刑事手続きを知っておこう
 密室での自白の強要
 負の連鎖を断ち切ろう
 逮捕=犯罪者ではない

第5章 「公務員バリア」の不可解な生き残り
 会社員が加害者の場合
 公務員が加害者の場合
 「公務員バリア」を認めてきた裁判所
 故意の行為をもカバーする
 なぜ「公務員バリア」を認めるのか
 特権意識と無責任体質の温床か
 「公務員バリア」を見直そう

第6章 企業と政治の強い接着剤−八幡製鉄政治献金事件
 時代が生んだ「助けた裁判」
 禁止されるはずだった企業献金
 企業献金についてまわる二律背反性
 会社には外国人と同様に選挙権はない
 政治改革の顛末
 カネの流れの「見える化」へ

第7章 なぜムダな公共事業はなくならないかー定数是正判決
 減らない公共事業
 民主主義の根幹を揺るがす投票価値の不平等
 定数不平等を放置する最高裁
 これでも「全国民の代表」なのか
 現職議員に不都合な定数是正は進まない
 最高裁の用いた二つの基準
 「一人別枠方式」という新たな問題まで合憲判断
 違憲判断を述べた反対意見
 参議院は定数格差が大きくてよいのか
 違憲判決への期待を裏切った平成18年判決
 そろそろ違憲無効判断を

第8章 最高裁はどこへ行った?−ロッキード事件
 賄賂は贈るほうも受け取るほうも悪い
 「今太閤」田中元首相の逮捕
 ロッキード事件はどう裁かれたか
 ロッキード事件ではなにが争われたか
 なぜこんなに時間がかかったか
 最高裁が失ったもの

第9章 裁判官を縛るムラの掟−寺西裁判官分限事件
 組織の問題はなぜ内部告発できないのか
 「ムラの掟」に疑問を唱えた裁判官
 現場からの発言をする自由もない
 問題提起をしてはいけない
 誰のための「裁判官の独立」か
 制裁を受けた裁判官には救済の道がない
 国際的な人権救済の道も与えられてない
 「ムラの掟」の浸透度の格差

第10章 あなたは最高裁裁判官を知っていますかー国民審査
 影の薄い国民審査制度
 現行の国民審査制度がなかったら
 実際はどう運用されているか
 「罷免を可としない投票」とはなにか
 連記制では一部の棄権は不可能
 棄権票を投じる自由の封殺が最高裁に好都合な理由
 現行方式が国会・内閣にとって好都合な理由
 罷免・信任・棄権・三択方式でなにが変わるか
 最高裁支持率の導入を

終章 法の支配がもたらす個人の幸せ
 「法の支配」と「人の支配」
 「法の支配」の脆弱さ
 国会(立法権)に対する「法の支配」
 役所(行政権)に対する「法の支配」
 裁判所(司法権)自身に対する「法の支配」
 変動する社会の中での「法の支配」
 7つの具体的提言
 国民一人ひとりから始まる「法の支配」

あとがき
主な参考文献